賃貸管理会社で進むアウトソーシング 事務作業を外注で社員の働き方変わる

2021年08月17日

山本悠輔(全国賃貸住宅新聞)

 ギグワーカーや業務委託サービスを使って、賃貸管理業務をアウトソースする管理会社が増えている。入居申し込み後の契約手続きや、物件情報の入力などの事務作業を委託し、社員の時間を仲介営業やリフォーム提案に重点的に割り当て、利益の拡大を図る。アウトソーシングの導入で変わる、賃貸管理会社の新たな働き方を取材した。


ギグワーカーがIT重説 社員は営業提案に専念

 第一不動産(静岡市)では、契約した顧客に対する重要事項説明をアウトソーシングし、業務の効率化を図っている。顧客がIT重説を希望した場合は、すべて委託先のスタッフが担当する。その件数は全契約数の9割に上る。

 業務委託契約を交わす主要スタッフは現在5人だ。電気工事士やトリマーなど、それぞれ異なる本業を持っているが、いずれも宅建免許を保有している人たちだ。土日だけではなく、平日の日中でも稼働する。一般的な求人サイトからの応募で、特別な採用コストを要することはなかった。

 業務単価は1件につき1000円。慣れた人の場合、30分で説明を終えるため委託されたスタッフにしても割りの良い仕事になっている。「ネット環境に問題がなければすぐに始められるので、場所の制約もない。人が集まりやすい仕事だと感じている」と保崎将士取締役は話す。

 同社の狙いは、宅建免許を持つ社員の業務量を軽減することだ。「重要事項説明は宅建士が行う決まりがあるため、契約が取れれば自ずとその後の業務も増えてしまう。宅建資格を持つ営業社員のそうした状況を改善する必要があった。」(保崎取締役)。入居申込が入った後の業務まで営業社員が担うことは、有効な時間の使い方ではないと判断し、アウトソーシングを活用することで、社員が売り上げ目標に集中できる環境を整備した。

社員採用も限界 業務負担を減らす必要

 「人材の確保が困難な地方の管理会社は、業務量をできるだけ減らす必要がある」と話すのは、香川県を中心に約3400戸を管理するコスモ不動産(香川県丸亀市)の野津靖生社長だ。3年前から、管理業務の事務作業を外部委託している。

 同社の場合、賃貸から売買まで社員は幅広い業務を担当する。以前は、スタッフが業務に追われ、残業が深夜に及ぶこともあった。一方で採用も容易ではなく、これまで続けてきた業務をすべて社内で行い続けることに限界を感じ、アウトソーシングすることを選択した。

 委託する業務内容は、契約書の作成、物件情報の管理ソフトへの入力、送金処理などの事務手続きと、入居者からの一時的な電話対応だ。3年前から徐々に移行し、現在はトラブルが起きることもほぼなく業務が回っている。社員一人の業務時間も、1日あたり4時間短縮された。

 「今後は、不動産のコンサルティングができるような社員を育てたい」と野津社長は話す。業務を委託することで生まれた時間は、家族信託の研修や資格取得の勉強に当てている。これまでの物件管理に留まらず、オーナーの資産運用を助力できるスタッフを育て、管理会社として幅広い業務に応えることに期待を寄せている。


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【9/30ライブ配信】「ギグワーカーがIT重説 売上アップにつなげる業務の仕分け方」第一不動産 保崎取締役 | 「人材不足を業務委託で解消 持続可能な管理会社の働きかた」コスモ不動産 野津代表取締役