紙書類の管理をすべてネットで完結 不動産会社自らプラットフォーム開発へ
2022年07月13日
トレンドニュース制作部ランドネット(東京都豊島区) 榮章博社長
2021年に上場した投資用不動産販売のランドネット(東京都豊島区)がDXの推進に注力しています。経済産業省が定める「DX認定制度」の認定を取得し、全国の不動産情報を独自に集約したクラウドシステム「RCP(リアルエステート クラウド プラットフォーム)を自社開発しています。同システムの概要と、不動産業界にもたらす影響について、榮章博社長に聞きました。
―RCPとはどのようなシステムなのでしょうか。
日本全国の不動産データをクラウドで保管するシステムです。登記簿情報を収集して反映させたデータで、区分所有マンション、戸建て住宅、アパートなどの不動産を、築浅/築古、投資用/居住用を問わずデータベース化しています。このRCPにより、全国に拠点を持つことなく全国の不動産情報が手に入るようになります。また、電子契約の普及により、実店舗を訪れることなく売買できるようになります。沖縄にいながら北海道の不動産を、海外にいながら日本の不動産を売買することが容易に実現できます。
このシステムを、物件オーナー、購入希望者、不動産会社、リフォームなどの施工会社に活用いただくものにしたいと考えています。利用者一人ひとりに「マイページ」を用意し、必要とする情報を一元的に管理する仕組みです。オーナーのマイページであれば、所有する物件の築年数、取引履歴、収支の状況に加え、売買契約書、賃貸借契約書、リフォームや修繕にかかった明細なども確認できます。不動産資産のポートフォリオを確認できるもので、経営分析にも活用できます。
―今まで紙で管理していたものや、社員や顧客が独自にまとめていたデータが、RCP上で完結する、ということでしょうか?
その通りです。不動産業界は今でも紙書類が多く、契約書、明細書といった重要書類を、数年間保管管理しており、紛失などのリスクを抱えています。RCPでデータ管理すればリスクを低減させられます。また、確定申告の手間も削減できます。確定申告で大変なのは必要書類を集めることですから、クラウド上で一元管理できれば手間を大きく削減できます。
―不動産会社や施工会社のマイページの内容は変わるのでしょうか。
不動産会社用ならば、物件に関する写真や謄本、重要事項調査報告書などを閲覧することができ、施工会社用であればリフォーム・リノベーションの施工管理情報などを閲覧できる、といったイメージです。
―RCPは自社で開発されていると聞きました。
約60人のエンジニアを社内に集め、開発しています。多くはベンダーからの出向者です。ただし、「作ってもらう」のではなく、自分たちの業務を円滑に進めるシステムを自分たちで開発する意識が大切なので、営業、バックオフィス問わず、あらゆる部門の社員が開発会議に参加し、要件定義と進捗報告を行っています。私も参加して、要件定義を行っています。
―従来の不動産会社の仕事ではありませんね。
創業するまで、私は大京グループの経営企画室にいながら、業務効率化を図るために独自でシステム開発を行っていました。そのため、システム担当が不動産会社を始めたようなものです。自社で使うシステムを開発していますが、多くの不動産会社に必要とされるものにしたい思いながら、開発しています。
―なぜこうしたものを開発しようと考えたのでしょうか。
不動産のDX化が急速に進んでいます。かつて役所を訪れなければ取得できなかった登記簿謄本をインターネットで得られるようになり、Googleストリートビューを使えば、物件の現地確認も自宅でできるようになりました。オンラインのIT重説が解禁され、契約で印鑑も不要になり、いよいよ実店舗を必要とせず、不動産の取引はネットで完結できるようになりました。
こんな時代に当社が目指すものを考えたとき、RCPがあれば多店舗展開せずに商圏を全国展開できると考えました。購入希望者もネット上ですべて完結できるなら、コストと時間をかけて地方の不動産会社を訪ねる必要もなくなります。
―IT重説の解禁によって不動産取引は劇的に手間が減りました。
特に海外顧客の反響がおおきかったですね。IT重説を導入し累計964件の取引がありましたが、うち29件が海外顧客です。
―オンラインで不動産の取引が完結するなら、海外からの需要は高まるかもしれません。
私個人としては、間違いなく高まると思っています。北半球にある温帯の島国は日本だけです。北半球は南半球よりも人口が多く、温帯なので熱帯、亜熱帯、寒帯に比べ、過ごしやすく、島国なので治安もいい。また、日本はデフレが続いているため価格も安いのです。海外の富裕層からすると非常に魅力的な地域だと思います。
―海外顧客に期待が持てそうですね。
ただ、海外の人に日本の不動産を売るためにRCPを開発するわけではありません。日本人が不動産を簡単に売却できるように、選択肢を広く持てるようにしたいのです。居住用のマイホームを購入する人はたくさんいますが、いずれ、売却するか、賃貸するか、相続するか、という選択を迫られます。現代は子供がいても不動産を継承してくれるとは限りませんから、資産を持つ人がどうするかを決めなければなりません。
だからこそ、RCPのようなシステムが必要だと思うのです。賃貸物件のオーナーだけでなく、不動産を持つあらゆる人が、銀行口座と同じような感覚で自分の資産のポートフォリオを手軽に把握できる仕組みです。空き家になって放置されるのではなく、不要になったら適切に売却できるようになります。
―それが同時にランドネットの全国展開にも繋がるのですね。
そうですね。多店舗展開することなく、ネット型で商圏を全国に広げられます。ただし、リフォーム施工の拠点は必要なので、47都道府県にそれぞれ拠点を置くようにしたいと思っています。