30グラムの炭素繊維プレートで 木造アパートを手軽に耐震補強

2021年10月22日

 炭素繊維の技術開発を行うデザインアンドイノベーション(東京都大田区)が、木造建物の柱と土台の接合部分に張り付ける、耐震補強材「AIプレート」を開発しました。建築基準法の改正以前に建てられた1981~2000年築の木造アパートの補強を目的にしたものです。1枚30グラムと軽くて扱いやすい部材ながら、高い耐震性を備え、短い工事期間で済むためコストも抑えることができます。 建物のオーナーや、リフォーム会社、賃貸管理会社の工事部門に対して、販売します。

▲柱に設置した、炭素繊維強化プラスチックの耐震補強材「AIプレート」

木材補強に適した強度を炭素繊維で作り出す

デザインアンドイノベーション / 耐震補強材 AIプレート

 「AIプレート」は、炭素繊維強化プラスチックでできた厚さ1㎜以下のプレートです。木造建物の柱と基礎コンクリートの接合部分にプレートをビスで張り付けて補強します。直下型地震などによって建物が倒壊するのは、柱が土台と分離することによって起こること多いと言われています。「AIプレート」に揺れの力を吸収させて、柱よりも先に炭素繊維が徐々に破断することで建物の突然の倒壊を防ぎます。

 炭素繊維を使う理由は、柱の補強に最適な強度のプレートをつくることができるからです。補強材が木材よりも強過ぎると、地震が発生した時に柱が先に壊れてしまいます。そのため、木材補強に最も適した強度のプレートを炭素繊維で作りました。

▲引っ張られる力によって徐々に炭素繊維が破断し、揺れを吸収する
▲直下型の熊本地震で1階部分が倒壊した木造アパート 写真:共同通信

1981~2000年に建てられた 木造アパートに最適

 デザインアンドイノベーションの坂本明男社長は、日本石油(現ENEOS)の研究員として、炭素繊維とリチウムイオン電池の開発に、長年従事してきました。その間、コンクリートやスチールの補強に使用する炭素繊維プレートの開発に関わり、2019年、木材の補強に使用する「AIプレート」を商品化するために創業しました。北海道大学農学研究院木材工学研究室との共同研究により、耐震補強効果を共同論文として発表し、施工方法や、補強具でも特許を取得しています。

 「熊本地震の時に、1階がつぶれた木造アパートの映像を見て、衝撃を受けた。その後、2000年の建築基準法改正以前に建てられた木造アパートに、柱と土台の接合部分の強度が不十分なものが多いことを知った。映像で見たアパートも、揺れにより柱が土台から外れて倒壊した。柱を土台に固定するための補強が必要だと知った」そこから、「AIプレート」の開発が始まったそうです。

 2000年以降の木造建物は、建築基準法で耐力壁を構成する柱の取付部にホールダウン金物を設置することが定められたため、倒壊の可能性が低くなりました。また、1981年よりも前に建てられた旧耐震基準の木造アパートは、効果が高い補修を行うには耐力壁の追加や基礎コンクリートの鉄筋化なども必要で、高額な補修コストに対し期待できる耐震性を考えると、建て直しを検討する必要もあるといいます。

 首都圏には1981年~2000年の間に建てられた木造アパートが、およそ3万棟あるといいます。この建物を耐震補強する、万が一の備えとして「AIプレート」は開発されました。「建物のオーナーに、危機に対応できる素材と工法があることを伝えたい」(坂本社長)

▲柱と基礎コンクリートの接合部にビスで取り付けて補強する

▲梁を連結する施工の様子。プレートは小さく薄く、施工も簡単

2階建て8戸の木造アパート 施工費込みで50~100万円程度

 これまで、補強効果が高い耐震補強工事と言えば、アンカーボルトをコンクリートの土台に打ち込む方法が一般的で、非常に大掛かりなものでした。これに対し、「AIプレート」は1つの柱を補強するのに30分もかかりません。数十本の柱を補強する必要があるとしても、1棟の工事を複数チームで行えば1日で終えることができます。「工期が短いため、費用も従来の耐震補強工事の半分程度で済む。施工時には、建物の外壁を外す必要があるが、居住しながらでも工事できる」(坂本社長)。外壁修繕工事と同時に実施すれば、さらに効率良く施工できます。

 費用の目安として、2階建て全8室、築30年の木造アパートの場合、柱と耐震壁の約50箇所に設置すると、施工費用を含めて50~100万円程度だということです(施工は提携する工事会社が請け負う)。また、リフォーム会社や賃貸管理会社の工事部門に対して「AIプレート」の部材提供もしています。

▲「開発のきっかけは阪神淡路大震災…。小さくても耐震補強が可能だとわかった」と語る坂本社長

炭素繊維だからこそ 木材の性能も伸ばせる

 坂本社長は長年携わってきた炭素繊維の研究開発の醍醐味を、次のように話しました。

「炭素繊維の最大の特徴は、強度を自由に設計できること。だから、これまで不可能だったことも可能になる。20~40年前ではできなかった木造建築の耐震補強も、今、この炭素繊維だからできる」

▲資料ダウンロードはこちらから

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【商品概要】
名称:AIプレート
素材:炭素繊維強化プラスチック(CFRP)
1枚のサイズ:H210㎜×W105㎜、厚み0.5~1.0㎜、約30g
特許取得:第6915817号 北海道大学農学部研究員木材工学研究室と共同で取得
施工方法と費用:詳細はデザインアンドイノベーションへ問い合せを

【会社概要】
社名:デザインアンドイノベーション
設立:2019年
代表取締役:坂本明男
事業内容:炭素繊維の新規用途開拓、木造アパートの耐震補強
所在地:東京都大田区上池台5-24-14
連絡先:問い合せフォームによる