SNS活用は物件集客の主流となるか。 Instagram・TikTokが賃貸仲介に及ぼすインパクト

 若年層を中心に人気の高いInstagramやTiKTokなどのSNSを活用し、無料で物件集客につなげる動きが増えている 。「モテ部屋」や「映え部屋」といったキャッチコピーで視聴回数を増やし、SNS特有の画像加工や、流行りの音楽を付けるなどの工夫でポップな部屋紹介を展開する。中には仲介担当者が登場し、オンライン内覧を体験できるような投稿もあり、遊びや趣味の域をはるかに超える。SNS経由でひと月20件ほど契約に至った事例も出ており、ポータルに変わる新たな集客ツールとして、注目が集まる。

SNSで仲介担当者にファンが付く。部屋ではなく人がメーンの集客手法

 関西を中心に管理・仲介を行うLAKIACOMPANY(ラキアカンパニー)では、2020年7月から企業公式アカウントとしてTikTokでの部屋紹介動画を公開。今では月に50件以上反響があり、集客の軸となっている。

 動画では「きょこたん」「ゆいぴょん」といった若手社員が登場し、流行りの音楽に合わせてテンポよく室内を回遊する。時折、「キュンです」や「日当たりよきまる!」といったフレーズを使い、SNSならではの親しみやすさを演出する。営業担当者を全面に出すことで、ファンの獲得にもつながっている。視聴者からは「ゆいぴょんに部屋探しをお願いしたい」といった形で反響があり、成約に繋がることがあるという。「SNS集客とポータルサイ ト集客との大きな違いは、顧客との信頼関係の築きやすさにある」と梅田店の緒方翔一店長は話す。

▲2月18日の賃貸トレンドニュースに出演し、全賃記者(左)のインタビューに答える緒方さん(右)

 インフルエンサーやデジタルクリエイターなど、インターネットで影響力のある人物が紹介した商品に人気が集まる現代の購買行動モデルが、徐々に賃貸業界にも浸透し始めている。

ポータル不要で仲介手数料ゼロも実現可能

 SNSを駆使することで、個人の力で顧客を獲得することも可能となる。「浪速のトランプ」のアカウント名で大阪市内を中心に賃貸仲介業に従事する金井さん。Instagramアカウントのフォロワー数は1万人、TikTokは約3000人と、個人アカウントとしての影響力を持つ。

 物件紹介の投稿を通じて、多い時は月に20件ほど契約につなげているという。いずれも、金井さんへ直接問い合わせが入る。「SNSで集客する最大のメリットは、顧客に対して安価で部屋を提供できることです」と話す。彼に入居者の獲得を委託する不動産会社との間で、完全成果報酬の業務委託契約を交わす。不動産会社側がポータルサイトを活用して集客を行うことはないという。つまり集客から接客、営業、契約までの一切が個人の裁量に委ねられている。その代わり、一つの契約における売上(仲介手数料+AD)の70%が金井さんの報酬に反映される仕組みだ。一般的な歩合相場が約10%とされる中で、破格である。そのため、顧客が支払う仲介手数料をゼロ円にしても、規約違反になることはなく、薄利多売にもならないという。

 「仲介手数料をゼロにすることで、僕との契約がどこよりも安いことが口コミで広がれば、顧客同士の紹介も増える」と戦略を語る。こうした営業手法が広まれば、ポータルサイトへの掲載やFC加盟、仲介店舗の意義をも覆す脅威となりかねない。

投稿における業務コストがネックに

 一方、大手ポータルサイト運営企業の担当者は「SNSで集客をする不動産事業者は、一定数に留まるだろう」と予測する。大きな理由の一つとして『投稿までの手間』を指摘する。いずれのSNSでも投稿する際には必ず画像、動画、文言が必須となる。特に動画メディアのTikTokでは、撮影した動画のテロップ付け、解説ボイスの後付け、画面の切り替えと1投稿における作業数は多い。

 実際、LAKIA不動産の緒方店長は「投稿に慣れるまでは時間がかかる。当社は業務として位置づけているが、会社の理解が得られなければ、パフォーマンスを継続するのは難しい」と話している。

 従来のポータルサイトでは、ビジュアルリサーチ、いい生活といった企業が提供する賃貸管理システムと連携しているため、物件情報の取り出しが容易だ。最低限の業務コストで掲載できる利点がある。こうした視点から、SNSでは広告費用が無料というメリットはあるものの、従来の集客ツールと比較して業務コストがかさむ問題や、集客見込みが立てづらいといった問題から、「一過性の流行の域を出ない」という見方もある。

 SNSを集客ツールとする不動産事業者は広がるか。それとも瞬間的なブームで収束するか。先発のLAKIA不動産が活用を始めてからまだ1年という点を見ても、しばらくは様子を見る時期となりそうだ。


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