部屋探しにVR内覧は必要ですか?  VR導入管理会社から見た「本当の効果」

2021年12月27日

山本悠輔(全国賃貸住宅新聞)

 VR画面で部屋探しを行うVR内覧が、賃貸業界で注目を集めている。コロナ下での非対面ニーズが後押しし、リアル内覧の代替案としてVRを活用するケースが多い。ユーザー・管理会社はVRをどのように使っているか、導入のメリットを聞いた。


VR撮影1000物件超え 自社仲介増加を後押し

「VR内覧を使うことで、自社付け率が向上した」と話すのは、神奈川県下に約3000戸を管理するエヌアセットの上野謙営業部長だ。同社では2020年初旬に管理物件を中心としてVR撮影を導入。偶然にもコロナ下と重なり、世間のニーズに合ったサービス提供となった。

↑エヌアセットが提供しているVR内見。細部まで鮮明に確認できる。

 約2年間で撮影したVRデータは、1000件に上っている。物件募集する際はポータルサイト、自社ホームページなど、ほぼ全ての集客ツールにVRデータを反映する。ユーザーからは、ウェブで部屋探しをする段階から物件の詳細な情報が見られると、評判も上々だ。ユーザーにとっても、VR内覧がリアルの代替になりつつあるのだろう。

 思わぬメリットもあった。前述した自社付け率の向上だ。4年ほど前は3割ほどだったが7割まで向上。もちろん全てがVR内覧を導入したからではないものの、VR導入を通して周辺の仲介会社より優位に立てる仕組みを構築している。

 エヌアセットでは、現入居者から退去申し込みが入った時点で、既に撮影した1000件のVRデータの中から、当該物件を集客サイトに反映する。リアルの内覧ができない中でも、ユーザーはVRデータで物件情報の詳細を閲覧が可能だ。新築物件の事例と同じく、実際の現場を見ずとも契約するケースもあり、物件のVRデータを持たない他の仲介会社より先に集客のスタートが切れている。撮影件数の多さや、導入事例を重ねたからこその効果だと言えるだろう。


仲介店舗を持たずに集客 入居率97%に上昇

VR導入で仲介店舗を持たずに集客ができている。

協同不動産のVR内覧ページ

 大阪府内の管理会社協同不動産(大阪府摂津市)では、約3年前から管理物件にVR内覧ツールを取り入れた。VRサービスを提供するスペースリー(東京都渋谷区)のサービスを活用し、現在も常時10物件ほどをスペースリーのサイト内で掲載している。

 「仲介店舗を持たない管理会社でも、自社での仲介数を高めたい」と堅田陵佑主任は狙いを話す。VR導入前までは、近隣の仲介事業者に客付けを任せている状態だったという。物件を管理している強みを生かす施策として、室内の様子を最大限引き出せるVRツールに目を付けた。

 VR導入の効果は、徐々に現れる。数年前まで約90%だった管理物件の入居率が、現在は97%を推移。これまでゼロ件だった同社での仲介件数も、2件ほど目途が立つようになった。最も利用しているユーザーは、遠方からの引っ越しや、退去前に契約する入居者だ。内覧が出来ない状態にあるケースで役立っている。

 堅田主任がVR導入で最もメリットに感じている点は、同社のホームページに直接問い合わせが入ること。ポータルサイトを経由しないため、導入当初の狙いだった自社仲介に繋がっている。


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