「オンライン仲介」は上手くいく?非対面部屋探しの最前線

2021年10月14日

山本悠輔(全国賃貸住宅新聞)

 急速に普及が進んだ、オンライン接客。一度も来店することなく成約する非対面仲介が、部屋探しにおいても増えてきている。完全非対面型を積極的に取り組む2社に、ノウハウと実績を聞いた。


非対面仲介で求められる”察する”力 

 非対面仲介特化型で展開をしているイーアス不動産(東京都文京区)。昨年1月から開始した『awanai賃貸』は当初、遠方からの転勤や引っ越しまでの工数を減らしたいニッチなニーズに応える事業として立ち上げた。コロナ禍で状況が一変し、一般ユーザーからの問い合わせも増加している。

 『awanai賃貸』は主にLINEを活用して集客から提案までを行っている。同社のLINEアカウントに友達登録すると、AIがチャット内で対応。希望の条件に合う物件をRPAにて5物件ほど割り出す。オペレータースタッフによる個別対応となった後も、オンライン内覧や物件動画を共有、成約後の重要事項説明、鍵渡しも郵送だ。LINE追加から申込みまで、一連の流れを最短5日で完了する。

 一方、非対面だからこそ発生する課題もある。LINE友達は現在1万7000件に達しているが、そこから成約までの確率の低さだ。転居への意欲が薄いケースなど、有効ではない顧客も多い。

 そのため、同社が最も注力するのが、オペレーター業務を行うスタッフの、オンラインでのコミュニケーションだ。具体的には『希望条件から最適の部屋を推察し、提案する』『ユーザーがAIチャットの返答に戸惑っているようなので電話対応に切り替える』など、AIでは算出できない部分の向上を掲げる。「部屋探しの主流が非対面になるほど、担当者のコミュニケーション能力の差が如実に現れる。業務効率や合理性を求めてオンライン市場に参入しても、早いうちに壁にぶつかるだろう」(岡田社長)

WEB申込連動で即時成約

 日本エイジェント(愛媛県松山市)では、2020年4月より、非対面専門接客部署「サテライトリーシングチーム」を発足した。愛媛県における緊急事態宣言明け以降でも、ひと月約50件成約しており、同社では賃貸仲介の新たな手法として位置付けている。

非対面仲介

 「サテライトリーシングチーム」では、20代の若手社員3人が主体となっている。ポータルサイトから反響のあった顧客が、非対面での接客を望んだ場合に対応を行う。現在、全体の反響数の約半数が非対面を希望するという。統括の樋口孝幸氏は「売り上げが全店舗で1位になることもある。コロナ下で緊急的に作った部署だが、今後も継続して高い数値を出せる手ごたえがある」と話す。

 接客手法は、主にラインやオンラインツールを使用する。チャット上でのコミュニケーションに手慣れた世代のため、対応はスムーズだという。オンライン内覧では、社員やアルバイトが現地に出向き、ライブ配信形式で行っていく。最近では、2カ所同時に内覧をするなど、オンラインならではの試みもある。

 非対面対応での最大のメリットは、生産性の高さだ。反響から内見、成約までの時間が短縮でき、社員1人当たりの内見件数も増やせるという。同社ではWEB申し込みシステムを導入しているため、最短で内覧時に申し込みまで完了することもある。こうした点は、顧客側にとっても利点がある。目を付けていた物件が、数日の間に他者に抑えられた。というケースを防ぐことができるからだ。

 今後同社では、無人店舗の展開や、店舗内でもオンライン接客ブースを設けるなど、非対面での接客件数を増やしていく考えだ。


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日時:12月16日(木)
配信:YouTubeLive
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