家主のための大規模修繕、大解剖!押さえるべきポイントとは

2021年09月26日

東島淳一郎(全国賃貸住宅新聞)なかはたはるな(全国賃貸住宅新聞)

 集合住宅の大規模修繕は工期が長く、費用が高額になるケースも少なくない。賃貸住宅の場合は、入居者への配慮も欠かせない。効果的な大規模修繕を行うために家主が押さえるべきポイントについて、賃貸住宅の大規模修繕を得意とする複数の工事会社に話を聞いた。

バリューアップ工事と建物の補修 家主が求める2つの目線

 大規模修繕とは、屋根の保善や外壁の落下防止など、建物の劣化による損傷を補修する工事を指す。防水加工の劣化による漏水や、外壁塗装の剥がれなどをきっかけに、修繕を依頼するケースが多い。空室対策を目的とした設備の拡充や、不動産価値を高めるためのリフォーム・リノベーションを改修とするならば、多くの家主が求めるものは、改修工事としての有効性も兼ね備えた大規模修繕だ。「賃貸オーナーは収益性を重視するため、リノベーションのような付加価値を求めつつ、物件の長寿命化による利回りを気にする人が大半」と、カシワバラコーポレーション(大阪市)の山本大地さんは話す。

株式会社朝日リビング(大阪市)竹原徹常務

 工事にかかる費用は、建物の状態や工事内容により大きく変わる。古い木造住宅の場合、高い修繕費用を払うよりも、立て壊して新築した方が良いこともある。「高額な工事だからこそ、損傷箇所の修繕だけでなく、入居者の属性を考慮し、物件の価値を上げるプランを提案する」と朝日リビング(大阪市)の竹原徹常務は話す。

入居者からの申告無ければ、劣化状況に気づきにくい

 賃貸住宅ならではの悩みもある。分譲マンションでは、長期修繕計画のもと、定期的な建物検査が行われるが、賃貸住宅の場合、大規模修繕を必要とするほどの建物の劣化状況を、オーナーが気づくのは容易ではない。入居者がいるため室内状況を確認しにくく、漏水などのトラブルが起きるまで、大規模修繕の必要性に気づきにくい。「漏水が起きた時には建物全体の修繕が必要となる場合が多い。緊急を要する工事では工期を調整しにくく、費用も高くなる。防水、外壁、屋根が危険因子になるため、複数個所をまとめて工事する計画を前もって立てるのが良い」とリノ・ハピア(東京都大田区)の小野原淳常務は話す。

リノ・ハピア(東京都大田区)小野原淳常務

 大規模修繕の計画を立てる上で参考になるのが、国土交通省が発行する『民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック』だ。大規模修繕に対する考え方や実施時期、費用感などが紹介されている。「建物を長く保って空室率ゼロを目指すのであれば、10~15年周期で改修工事を行う意識を持つべきだ。当社の場合、数年に渡って家主から相談を受けて工事に至るケースが大半だ」(朝日リビング・竹原常務)

工事費用の目安 1戸当たり70万円

 賃貸住宅の大規模修繕においては、事前に資金を用意していないオーナーが多い。費用の目安は「5~7階で30戸規模の建物で大規模防水工事を行う場合、1戸あたり70万円程度、30戸なら2000万円程度が相場」とトゥインクルワールド(大阪市)の淺田靖浩さんは話す。

トゥインクルワールド(大阪市) 淺田靖浩さん

 金額を大きく左右するのが足場だ。足場を組む必要がある場合は、外壁塗装など足場がなければできない項目をまとめて実施したほうが長期的には費用の軽減につながる。「売却を見越して物件価値を上げるために大規模修繕を行うオーナーもいる」(淺田さん)

業者選びでは入居者対応も重要な要素

 業者選びにも注意が必要だ。例えば屋上防水一つとっても、様々な工法がある。全国の建築板金・止水・防触・塗装業者が加盟する日本防水工法開発協議会(神奈川県海老名市)は「シーンによって工法を使い分けることが重要だ。防水シートを接着する工法だけではなく、防水シートの下に空気を送り込んで水分や熱の溜まり込みを防ぐ工法などもある。防水性が高く、居室の湿気やカビ防止、断熱性の向上にもつながる」と話す。

日本防水工法開発協議会(神奈川県海老名市)
久保田隆事務局長

 オーナーや入居者に対するコミュニケーション能力も重要な要素になる。「オーナーに対する施工スケジュールの共有や、生活する入居者への配慮は欠かせない。技術力に加え、きめ細やかな案内や入居者に寄り添った現場監督能力などソフト面に差が出る」(カシワバラ・コーポレーション・山本さん) 

カシワバラコーポレーション(大阪市)山本大地さん

 新型コロナウイルスの影響は、大規模修繕の工事にも及んでいる。現場で実施する感染拡大対策により、工期が長期化するケースも増えた。そもそも工期が読みにくくなり、緊急対応費用もかさんでいる。工事期間の目安を施工会社に、細かく確認することも重要になっている。


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