経費精算の内容をAIがチェック業務効率化と不正防止に効果大

2023年02月16日

 ミレトス(東京都中央区)が提供する『SAPPHIRE(サファイア)』は、経費処理などの経理業務をAIで処理するサービスです。これまで経理担当者が行ってきた経費精算や社員の通勤費・交通費の精算や内容チェックをAIが行います。サービスの概要と導入のメリットについて、朝賀拓視社長に聞きました。

ミレトス / SAPPHIRE

経理担当の工数が大幅削減 不備・不正を未然に防止する環境づくりにも

ミレトスの朝賀拓視社長

――『サファイア』とはどのようなサービスですか?

 経理の精査に特化したAIサービスです。経費精算を自動化できるだけでなく、申請の内容をAIがチェックし、不備や不正を未然に防止する効果も期待できます。経理部門の業務効率化サービスは多くありますが、AIで内容チェックまで行うサービスは国内では先端の技術です。

――具体的には、どのようなことができるのでしょうか?

 サファイアには2つのプランがあります。さまざまな経費申請の内容をチェックして精査する「サファイア 経費精査」と、社員の通勤費や交通費の実費精算を精査する「サファイア近郊交通費」です。どちらもAIが申請内容をしっかりとチェックする機能がついており、レシートと申請内容の日付や金額が一致しているかをチェックしたり、「タクシーの領収書なのに飲食代として経費精算されている」というミスもチェックすることができます。

――人的精査が必要な内容まで精査してくれるのですか?

 たとえば、「交際費(会食)の人数が合っているか」や「適切な場所で会食が実施されているか」、「タクシー領収書の金額に不正はないか」などもチェックすることができます。タクシーの領収書の妥当性を判断するには正確な乗降位置情報が必要となりますが、サファイアでは営業日報やカレンダー、基幹システムなどのデータと連携して社員の一日の動きを把握して照会する機能が備わっています。そのため、タクシーの金額に妥当性があるかもチェックすることができるのです。こうした経費精算の精査はこれまで経理担当者が人力で行っていましたが、社員数が多かったり事業所が複数あると全てを丁寧に精査することは難しくなります。中には不正に経費を申請する人もいますが、それを野放しすることにもなってしまうのです。

▲「不適切店舗」の利用に関しての分析結果画面(画面改修中のためイメージ画像)

――ただの業務効率化システムとは言えないわけですね。

 もちろん、業務効率化としても大きな効果が期待できます。先ほど言った通り、経理担当者が人力で経費精算の内容をチェックするには大幅な時間がかかりますので、それを自動化できるだけでも大きなメリットだと思います。しかし、それと同じくらい不正防止効果には大きなメリットがあります。

 一言に不正といっても多様なケースがあります。特に、社内で権力がある人の経費精算となると、多少の不備・不正に目をつぶるケースも多いのが実情です。そうした行為は部下や周囲の社員にも悪影響を及ぼしますし、経理部門は社内での立場が強くないことも多いので不正に気付いていてもそのまま処理せざるをえず、モヤモヤとした感情を持ちながら仕事をするということも少なくありません。

 こうした不正が公になると信用問題にもつながります。上場企業であれば株価に影響する大問題にもなり兼ねませんが、現状は適切な精査が行われている企業は多くありません。人的チェックではなくAIが公正にチェックしているという体制が社内に浸透すれば、不正を未然に防止することもできます。

交通費の精査の工数を9割削減

――実際にサファイアを導入している企業としてはどのような企業がありますか?

 2019年にサービスを提供開始し、現在では大手企業を中心に30社が導入しています。花王(東京都中央区)では6000人の美容部員の通勤費・交通費精算を自動化するために「サファイア近郊交通費」を導入しています。美容部員は出勤場所が固定されず毎日異なる通勤費・交通費が発生します。そのため、経理担当もチェックに大幅に手間がかかっていました。「サファイア近郊交通費」の導入により、美容部員はスケジュールと入退館情報からAIが自動で通勤費を算出して申請できるようになりました。各員はAIで算出された通勤費の内容をチェックして申請ボタンを押すだけでよく、電車が止まっていた等のイレギュラーな場合のみ手直しする程度の作業で十分になりました。また、経理担当者は各員が修正した内容だけチェックするだけでいいので、精査にかかる工数が9割近く削減されました。

▲通勤費・交通費申請やチェックを自動化できる

――移動が多い不動産業界でも高い効果が期待できそうですね。

 そうですね。管理物件のメンテナンスなどで決まった場所に行くことが多い場合、作業完了報告書や1日のスケジュールとデータを連動させることで交通費の妥当性をチェックすることができると思います。電車やタクシーだけでなく、営業車やフェリー、自転車なども含めて対応しているので、仕事ルートから外れた場所で駐車場を使用したりガソリン給油をしていないかもチェックすることができます。

――業種・業界を問わず役立ちそうですね。

 近年はコロナによって経理部門に新たな問題も発生するようになりました。通勤定期を廃止して交通系ICカードを支給する企業も増えましたが、そのカードを通勤と取引先への訪問の両方に使うと処理上の問題が発生します。通勤費は人事管轄の給与扱いなのですが、訪問にかかった交通費は経理管轄の経費扱いとなるため、それぞれ別のシステムで処理しなければなりません。1枚のカードで併用している場合、通常のシステムで読み込んだ場合は全て経理管轄の経費として扱われてしまいます。「サファイア近郊交通費」では会社の規定をAIデータに取り込むことで、通勤費と交通経費をそれぞれ仕分けることができます。仕事上さまざまな場所を異動する場合も、自宅情報と会社規定をインプットすれば、その日の最後の交通費だけを通勤費扱いにするといったことも設定することができます。

――なぜこうしたサービスを開発したのでしょうか?

 私も、CAOの高橋康文も、コンサルティング会社のアクセンチュア出身です。高橋はコンサルタントとして会計まわりの不正防止や工数削減に関わっていました。どちらも地道な作業が必要で、一件一件行うのが大変な業務なのですが、AIを使って解決できないかと考えるようになりました。私も上場企業のコンサルティングに携わる中で、ガバナンスが緩いと感じる企業が多くありました。特に上層部の経費については誰もチェックしていないケースが多いのです。こうした不正が公になれば株価にも影響を及ぼしますし、株主の信用問題にもつながります。サファイアを通じて「不正が起きない環境」を作ることで、そうしたリスクに対応できるようになってほしいと思っています。

【サービス概要】
サービス名:SAPPHIRE
価格:要問い合わせ

【会社概要】
社名:Miletos(ミレトス)
設立:2016年6月
代表取締役社長 兼 CEO:朝賀拓視
事業内容:AIを利用したビジネスプロセス改革/DXコンサルティング/業務支援AI SaaSの開発/運営
本社所在地:東京都中央区銀座6丁目10番1号 GINZA SIX 13F
連絡先:sapphire@miletos.tech