「リターゲティング」が使えなくなる Google閲覧履歴情報 提供停止でウェブ広告の見直し必要

 自社のウェブサイトを訪れた人を、サイトから離れた後も追いかけて広告表示する「リターゲティング」と呼ばれる広告手法を、2022年早々使えなくなるかもしれない。22年4月の改正個人情報保護法の施行前に、Google(グーグル)が、この手法の前提となる「閲覧履歴情報」を第三者に提供する(サードパーティークッキー)サービスを、停止する可能性があるからだ。投資用不動産販売会社や、地域大手の賃貸仲介会社など、利用頻度の高い不動産会社は、ウェブ広告戦略の見直しを迫られている。

広告費の3割を割いている現状

 閲覧履歴情報の提供サービス停止について、Googleは22年中に実施すると、20年1月に発表した。EUのデータ保護規則であるGDPRや、米国カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)の成立など、世界的に高まるプライバシー保護の要求を受けたものだ。閲覧情報はウェブブラウザー「Google Chrome」で得たもので、Appleの「Safari」や、Mozillaの「Firefox」など、競合サービスは既に提供を止めている。日本の改正個人情報保護法が施行されるのは22年4月だが、それよりも前にGoogleがサービスを停止すると予想するウェブ広告関係者は多い。

 閲覧履歴情報の提供を前提に行われているサービスがリターゲティング広告だ。不動産業界でもマンションデベロッパーなど積極的に使う企業は多く、賃貸業界も例外ではない。「地域に特化し複数店舗を展開する地場大手の不動産会社の場合、広告予算の3割程度をリターゲティング広告で運用するところが多い」と話すのは、不動産会社からウェブ広告運用を任されるLIFULL Marketing Partners(ライフルマーケティングパートナーズ:東京都千代田区)の斉藤秀典開発部長だ。

ウェブ広告全体の見直し必要

 不動産会社のウェブ広告手法で多いのが、最初にポータルサイトや、一般的な検索、あるいは関連性の高い検索キーワードを入力した閲覧者に表示した「リスティング広告」から自社サイトに人を集め、その後、閲覧者が他のサイトに移った後も、追跡して広告を表示し囲い込むものだ。ポータルサイトの出稿やリスティング広告は、閲覧履歴情報を使用しないため今後もこれまで通り使用できる。だが、契約を獲得するためのリターゲティング広告が使えないとなると、全体設計を考え直さなければならない。

 閲覧履歴情報の提供を前提にしたサービスは他にもある。複数のメディアサイトの中からもっとも相性の良いターゲットが訪れたサイトだけに広告を出稿する「DSP広告」や、商品を購入した人にとって自社に関わるどの情報がきっかけになったか、過去の接点までさかのぼって分析する「アトリビューション分析」などだ。これらも精度の低下が避けにくい。

繁忙期までに対策必要か

▲Priv Tech の中道大輔社長(左)と、LIFULL Marketing Partners の斉藤秀典開発部長(右)

 代替策はないのか。「閲覧履歴情報に代わる次の一手を、世界中のウェブ広告関係者が探しているが、答えはまだ見つかっていない」と話すのは、PR大手のベクトル(東京都港区)が、ウェブマーケティング専業のインティメート・マージャー(東京都港区)と設立したPriv Tech(プライブテック:東京都港区)の中道大輔社長だ。「改正個人情報保護法に対応しつつ、有効と思われる対策を早く始めることが重要」(中道社長)

 Priv TechとLIFULLが4月9日に開催した不動産業界向けのオンラインセミナーには、上場企業やマンションデベロッパーからデジタルマーケティングや法務の担当者が参加した。反響は大きく、5月以降も継続して開催するという。「コロナ禍以降、不動産業界でもウェブマーケティングやオンライン施策が浸透したが、これまでの手法が22年以降通用しない可能性は低くない」(斉藤部長)


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